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「引用」と「著作権」に関して
(2004-09-19 07:38JST初出)
(2006-04-16 03:20JST修正)

著作権法という法律があり、人が作ったものは文章であろうが絵であろうが彫刻であろうが音楽であろうが、さまざまなものの権利が法律で定められている。また同時に、それらを利用する側にも「引用」の権利が認められている。





著作権法における利用とは、簡単に言えば、

「個人がひとりで楽しむ分には勝手にコピーをしてもかまわないが、それを不特定多数に公開・配布するような場合、著作権者の権利を侵害する可能性が大きい」

ということであろう。たとえパスワード制限付きのWEBサイト内にアップロードした場合であっても、自分以外の誰かが閲覧できるのであれば、それは権利侵害になる。ふつうはあまりバレることがないから大丈夫だろうと思っていても、すでに著作権法違反の既遂であるから、見つかった場合言い逃れはできないので注意するように。刑事罰は親告罪であるが、

第百十九条

次の各号のいずれかに該当する者は、五年以下の懲役若しくは五百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。

— 著作権法

(法改正により罰則が強化された)

と定めがあるように、厳しい罰則が待っているほか、民事での損害賠償請求もあるので、身勝手なことはしない方が賢明である。

さて、「著作権法」上の「引用」の定義について考えてみる。同法には、

第三十二条

公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない。

とある。ここからわかるとおり、ポイントは大きくふたつ。

  1. 公正な慣行に合致すること
  2. 正当な範囲内であること

である。まず「慣行」とは、自分の著作物でないことを明らかにし引用元を明示することだと思う。引用元の明示に関して「著作権法」では以下のように規定している。

第四十八条

  1. 次の各号に掲げる場合には、当該各号に規定する著作物の出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない。

    一 第三十二条、第三十三条第一項(同条第四項において準用する場合を含む。)、第三十七条第一項若しくは第三項、第四十二条又は第四十七条の規定により著作物を複製する場合

    二 第三十四条第一項、第三十七条の二、第三十九条第一項又は第四十条第一項若しくは第二項の規定により著作物を利用する場合

    三 第三十二条の規定により著作物を複製以外の方法により利用する場合又は第三十五条、第三十六条第一項、第三十八条第一項、第四十一条若しくは第四十六条の規定により著作物を利用する場合において、その出所を明示する慣行があるとき。

  2. 前項の出所の明示に当たつては、これに伴い著作者名が明らかになる場合及び当該著作物が無名のものである場合を除き、当該著作物につき表示されている著作者名を示さなければならない。

  3. 第四十三条の規定により著作物を翻訳し、編曲し、変形し、又は翻案して利用する場合には、前二項の規定の例により、その著作物の出所を明示しなければならない。

(強調は引用者による)

このように、何かの引用をする場合、自分で作ったかのようにふるまうことは違法である。また、出典を明示しないのもまずいと思われる。そうしないと、「盗作」や「偽造」の罪に問われることになることもあるだろう。

さてこのように「引用」は著作権者でなくても自由に行える権利なのだが、いつも問題になるのはその正当な範囲である。最高裁の有名な判例がある。以下に判例要旨の一部を引用する(笑)。

ここにいう引用とは、紹介、参照、論評その他の目的で自己の著作物中に他人の著作物の原則として一部を採録することをいうと解するのが相当であるから、右引用にあたるというためには、引用を含む著作物の表現形式上、引用して利用する側の著作物と、引用されて利用される側の著作物とを明瞭に区別して認識することができ、かつ、右両著作物の間に前者が主、後者が従の関係があると認められる場合でなければならない


- (判例 S55.03.28 第三小法廷・判決 昭和51(オ)923 損害賠償(第34巻3号244頁) -

これによれば、「正当な範囲の引用」とは、

  • 引用する部分とそれ以外の部分がハッキリと区別できること
  • 引用される部分はあくまでもその著作物に対しての「従属関係にあること」

ということになるだろう。後者はわかりにくいのでよく争点になるのだが、簡単に例を挙げるとこんな場合が考えられる。

著作権法における利用とは、簡単に言えば、個人がひとりで楽しむ分には勝手にコピーをしてもかまわないが、それを勝手に不特定多数に公開・配布するような場合、著作権者の権利を侵害することになる。ということであろう。たとえパスワード制限付きのWEBサイト内にアップロードした場合であっても、自分以外の誰かが閲覧できるのであれば、それは権利侵害になる。ふつうはあまりバレることがないから大丈夫だろうと思っていても、すでに著作権法違反の既遂であるから、見つかった場合言い逃れはできないので注意するように。

- 「お伏伏伏伏伏話」より -

私もそう思います

御覧いただければおわかりだろうが、引用の部分が大半で、最後にひとことだけ自分の意見を付け加えたものである。これだと引用部分で書かれているものが著作者の主張する「主」の部分と受け取られても仕方ない。そして、「引用」が著作者の意見に従属する部分に当たるとはとても言い難い。あくまでも自分自身の意見を表明するための手助けとして「引用」をするわけだから、他人の意見をまるまる使って代弁させるのは「正当な範囲」を越えている可能性が高い。あくまでも作者自身の主張がメインであることが望まれる。これは分量的なものだけでなく内容的なものでも主従関係の適切さが求められているのである。

以上、一般的な引用の基準について考えてみた。次にインターネット上における引用について考えてみる。実際、インターネット上で公開されている著作物で、上の例に近いものは多々見受けられる。特に多いのがニュースサイトなどの記事の引用である。私も注意しなければならないと反省しているが、どこかの記事の大半をはりつけ、ひとことだけ書いているようなやり方は、「正当な引用の範囲」を逸脱していると思われる。

インターネット上で公開されている著作物に関して引用をする場合、上に書いたことの繰り返しになるが、

  • 自分の作ったものの内容を補完するために、他人の著作物を使うのであり、
  • その場合、引用元を明示し、場合によってはリンクなどを行う

のが望ましいであろう。たとえば、自己の著作物ではない文章のまるまるコピーを転載するなどは明らかに違法であろう。ここで注意して欲しいのはリンクと引用の違いである。引用というのは他人の著作物を自己の著作物内に取り込む行為であるが、リンクというのは自己の著作物の内容ではなく、単なる紹介先を示しただけである。だから、リンクに関しては著作権法は及ばないと考えられるので、「無断リンク」という考え方は著作権法的には保護されないことになる。もちろん道義的・感情的には非難されるべき場合もあるだろうが。自分とは真っ向反対する意見の持ち主から、攻撃対象として自分のWEBページが紹介されリンクされている場合など、状況によっては、「民法」の「不法行為」による損害賠償請求の対象にはなるかもしれないが、法的な立証が難しいことは考えられる。少なくとも「著作権法」では保護されない。


2006-02-25 04:41JST追記

ブログの広がりにともなって、よく見かける著作権関連のことを書いておく。以下の行為はWEB上に公開した時点で著作権法違反の既遂であるから、それなりの処罰(上記法律を参照)を受けることを覚悟しておくこと。

テレビ画面のキャプチャ画像を載せる行為は、違法性が高い。著作権者である放送局の許可を得る必要がある。それがないならアウト! WEBスペースやブログサービスの提供会社によっては、テレビなどからのキャプチャ画像を載せること自体を禁止しているところもある。テレビ局に許可を取った上で、提供元を明示して掲載するように。無許可は違法である。

CDやDVDのジャケット画像を自分で写真に撮ったものを載せているケースを見かけるが、あれは場合によってはかなり黒に近いように感じる。たとえば机の上に置いてあるところを遠目に写したような場合、ジャケットの画像の判別がしにくいようなものなら、「机を撮った」と解釈もできようが、接写でハッキリとわかるようなケースは、ジャケットの作成者の権利を侵害していると感じる。「ジャケットを見せたい」という意識が前面に出ているからだ。この辺は、上述の「主従関係」を類推して欲しい。

この両者にまたがるようなこととして、部屋の中を撮影したらテレビ画像が入っていたというケースがある。権利意識にしっかりした人なら、テレビ画面にモザイク処理を施すのがベターだろう。何が写っているのか判別がつくようではまずいと思う。ここでも「主従関係」を類推してみよう。


さて、話がそれてしまったので元に戻そう。インターネット上における他人の著作物の「引用」に関しては、上述したことに注意していればたいていのことは問題ないと思うのだが、音楽に関しては注意が必要である。JASRAC(社団法人日本音楽著作権協会)という団体があり、ここでは、音楽そのものだけでなく作詞内容に関しても著作権を厳しく主張している。ネットワーク課というセクションがあり、そこでくわしいことはご覧いただくとして、簡単に言えば、

  • JASRACに登録してある音楽を"勝手"に配布すると著作権侵害になる
  • 権利者の許可無しに、コピーや編曲したMIDIやMP3ファイルを配布するのは違法である
  • 歌詞の引用は著作権侵害の可能性がある

ということである。自分のWEBサイトで特定アーティストのファンページなどを作っている人や、自作ではないコピー曲を配布している人(無許可でいまだにやっている奴がいるのか?(笑))などは、もしこれらのことを知らなかったのであれば、一度FAQのページを御覧になることをおすすめする。彼らの主張はある面で厳しすぎる面もあり(歌詞の引用など)、著作権法的にはセーフなのではないかと思われることもあるのだが、やぶ蛇になって裁判にでもなったら、たとえ勝てる場合であっても時間と労力の無駄だから、できるだけそうならないように防衛しておくのがベターであろう。でも、もし、「JASRACと戦って歌詞の引用を勝ち取ってやる」と思う人がいたら頑張って下さい(笑)。影ながら応援しています(カンパ等のお金は出しません。あくまで念じるだけです(笑))。

2006-04-16 03:20JST追記

JASRACとの往復書簡」というページを見つけました。歌詞を引用して紹介していた方のところへJASRACから請求が来たそうです。けっきょく支払わないですんだそうですが、このやりとりはとても参考になります。

一般的な引用の範疇で紹介する分には、わたし的にはオッケーだと感じています。

最後に参考になるWEBページを紹介しておきます


by Der_Wolf | 2004-09-19 07:38 | Law (1)